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金属の種類一覧|鉄鋼・非鉄金属の特徴と選び方

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こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。

設計図面や見積書では、SS400、S45C、SUS304、A5052など、さまざまな材料記号を目にします。記号を見慣れていても、鉄鋼と非鉄金属の違いや、強度・耐食性・加工性の特徴をまとめて説明するのは難しいものです。

同じ金属材料でも、合金成分、質別や熱処理、加工状態、製品形状によって性質は変わります。例えば、軽量化にはアルミニウム合金が候補になりますが、たわみや高温での強度も確認が必要です。ステンレス鋼も、塩化物や薬品の種類、すき間の有無によっては腐食します。

この記事では、代表的な金属材料の種類とJIS材料記号を一覧で整理し、強度、加工性、使用環境、コストなどから候補を絞る方法を解説します。材料名だけで適否を決めず、使用条件と加工方法を含めて比較することが選定ミスを防ぐポイントです。

目次 [閉じる]

金属の種類を一覧で比較

工業材料として使われる金属は、大きく「鉄を主成分とする鉄鋼材料(鉄系材料)」と「鉄を主成分としない非鉄金属」に分けられます。まずは、製造業で使われる代表的な材料の位置づけを確認しましょう。

分類 代表的な材料 主な特徴 主な用途例 選定時の注意点
鉄鋼 一般構造用圧延鋼材
SS400など
流通量が多く、構造部材として使いやすい 架台、建築部材、機械フレーム 溶接性を一律に判断せず、板厚や施工条件を確認する
鉄鋼 機械構造用炭素鋼
S45Cなど
炭素量が規定され、熱処理によって強度や硬さを調整しやすい シャフト、ピン、歯車、機械部品 溶接割れ、熱処理による歪み、仕上げ代を考慮する
鉄鋼 合金鋼
SCM435、SCM440など
クロムやモリブデンなどの添加により、焼入れ性や強度を高めやすい 高強度ボルト、軸、歯車 鋼種、熱処理条件、硬さ指定をセットで確認する
鉄鋼 鋳鉄
FC、FCDなど
鋳造による複雑形状に向き、種類によって振動減衰性や強度が異なる 工作機械ベッド、ポンプ部品、配管部材、蓋類 FCとFCDでは延性や用途が異なる。鋳造欠陥や肉厚差にも注意する
鉄鋼 ステンレス鋼
SUS304、SUS316など
クロムを含み、不動態皮膜によって耐食性を得る 食品設備、化学設備、建材、機械部品 ステンレス鋼も環境によって腐食する。加工硬化にも注意する
非鉄金属 アルミニウム合金
A5052、A6061など
軽量で、熱伝導性や加工性に優れる材料が多い 筐体、カバー、輸送機器、放熱部品 合金系と質別で性質が変わる。たわみや異種金属接触腐食も確認する
非鉄金属 銅・銅合金
純銅、黄銅、青銅など
電気伝導性や熱伝導性に優れ、合金化によって機械的性質を調整できる 電線、端子、熱交換器、軸受、継手 合金の種類、表面変色、異種金属との組み合わせを確認する
非鉄金属 チタン・チタン合金 鉄鋼より軽く、種類によっては高い比強度を得られる。海水などに対する耐食性にも優れる 航空機、化学設備、熱交換器、医療用途 加工時の発熱や焼付き、溶接時のシールド、調達性を確認する
非鉄金属 マグネシウム合金
展伸材・ダイカスト材など
実用金属の中でも軽く、比強度や振動吸収性に優れる 輸送機器、電子機器の筐体、ケース類 合金と製法、耐食性、切りくずや粉じんの安全管理を確認する
非鉄金属 亜鉛・亜鉛合金
ZDC1、ZDC2など
融点が比較的低く、ダイカストや鉄鋼の防食に利用される 亜鉛メッキ、黄銅、ダイカスト部品、電池材料 使用温度、必要強度、腐食環境、表面処理を確認する

※注意:表中の特徴は、材料群としての一般的な傾向です。同じ名称の材料でも、鋼種・合金番号・質別・製品形状・熱処理によって性質が変わります。最終選定では規格値やミルシート、メーカー資料を確認してください。

代表的なJIS材料記号と一般名称

材料記号は、材質だけでなく、製品形状や質別などを含めて示す場合があります。代表的な対応を確認しておきましょう。

材料記号の例 一般的な呼称 指定時に確認したいこと
SS400 一般構造用圧延鋼材 板・形鋼・棒鋼などの製品形状、板厚、溶接の有無
S45C 機械構造用炭素鋼鋼材 熱処理、硬さ、仕上げ寸法
SCM435・SCM440 クロムモリブデン鋼(機械構造用合金鋼鋼材) 熱処理条件、硬さ、必要強度
FC250 ねずみ鋳鉄品 肉厚、鋳造品質、必要な引張強さ
FCD450-10 球状黒鉛鋳鉄品 強度・伸び、鋳造品質、熱処理
SUS304・SUS316 ステンレス鋼 板・棒・管などの製品規格、表面仕上げ、使用環境
A5052P アルミニウム合金板・5052合金 合金番号、製品形状を示す記号、質別、板厚
C1100P・C1100R タフピッチ銅板・銅条 Pは板、Rは条。導電性、加工性、質別、板厚を確認する
C2600P・C2600R 黄銅板・黄銅条(黄銅1種) Pは板、Rは条。加工性、質別、板厚、使用環境を確認する

同じ合金でも、板、棒、管、鋳物などで適用される規格や記号が異なる場合があります。図面へ指定するときは、材質記号だけでなく、製品形状、質別や熱処理条件、寸法、必要な機械的性質を確認してください。

金属材料とは

金属材料とは、金属元素または金属を主体とする合金を、板、棒、管、線、鋳物などの形にして、部品や構造物に使用できるようにした材料の総称です。

多くの金属は、電気や熱を通しやすい、塑性加工ができる、金属光沢を示すといった性質を持ちます。ただし、これらの性質はすべての金属に同じ程度で備わっているわけではありません。電気伝導性、熱伝導性、強度、磁性などは、金属の種類や合金成分によって大きく異なります。金属に共通する性質と加工への影響は、「金属の性質とは?種類ごとの特徴と加工への影響をわかりやすく解説」で詳しく紹介しています。

実務では、材料の名称だけでなく、次の項目を組み合わせて評価します。

  • 強度、硬さ、剛性、靭性
  • 疲労、摩耗、衝撃に対する耐久性
  • 耐食性、耐熱性、熱膨張
  • 切削、曲げ、溶接、鋳造などの加工性
  • 質量、導電性、熱伝導性、磁性
  • 材料費、加工費、入手性、メンテナンス性

材料そのものでは満たしにくい表面性能については、メッキ、アルマイト、溶射、塗装、機能性コーティングなどを組み合わせる方法もあります。処理方法の全体像は「表面処理とは?種類や目的、処理方法など知っておきたい基礎知識を解説」、用途や現場の課題から候補を絞る考え方は「表面処理の選び方|処理名で決めず、現場の課題から最適な方法を考える」をご覧ください。

金属の分類|鉄鋼と非鉄金属の違い

鉄鋼は鉄を主成分とする材料

鉄鋼は、鉄を主成分とする材料群です。鋼、鋳鉄、ステンレス鋼などが含まれます。

鋼は、炭素量、合金元素、熱処理などによって、強度、硬さ、靭性、溶接性などを調整できます。規格や製品形状が豊富で、建築・土木から自動車、産業機械まで幅広く使用されています。

鋳鉄は鋼より炭素量が多い材料群で、黒鉛の形状や基地組織によって性質が変わります。一般的には炭素量約2%付近が鋼と鋳鉄を分ける目安になりますが、規格や成分によって例外があるため、炭素量だけで分類しないことが大切です。

鉄、鋼、鋳鉄の違いは、「鉄と鋼の違い|炭素量・性質・種類・用途と選び方を解説」で詳しく紹介しています。

非鉄金属は鉄を主成分としない材料

非鉄金属は、鉄を主成分としない金属および合金の総称です。アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム、亜鉛、ニッケルなどが含まれます。

軽量化にはアルミニウムやマグネシウム、電気・熱伝導には銅、比強度と耐食性にはチタンというように、要求される機能に応じて選ばれます。

※分類上の注意:ステンレス鋼は名称に「ステンレス」と付きますが、鉄を主成分とする鋼であり、非鉄金属ではありません。また、「非鉄金属=磁石に付かない」とも限りません。コバルトやニッケルなど、磁性を持つ非鉄金属もあります。

鉄鋼の種類と特徴

一般構造用圧延鋼材(SS材)

SS材は、建築、機械架台、フレームなどに広く使用される一般構造用圧延鋼材です。代表例のSS400は、引張強さなどの機械的性質を中心に規定され、板、形鋼、棒鋼などさまざまな形状で流通しています。

入手しやすく汎用性が高い一方、「SS材なら溶接しやすい」と一律に判断するのは避ける必要があります。板厚、拘束度、溶接方法、使用温度、要求される靭性などによって適切な材料は変わります。溶接部の品質を重視する構造では、溶接構造用圧延鋼材のSM材や建築構造用圧延鋼材のSN材なども候補になります。

※選定のポイント:図面で「SS400」と指定するだけでなく、製品形状、板厚、溶接の有無、使用環境、必要な検査まで確認します。

機械構造用炭素鋼(S○○C材)

S45CなどのS○○C材は、機械構造用炭素鋼鋼材です。S45Cの炭素量は0.42~0.48%で、焼入れ・焼戻しなどの熱処理によって強度や硬さを調整できます。

シャフト、ピン、歯車などの機械部品に使われますが、すべての部品で熱処理が必要なわけではありません。必要な強度、表面硬さ、摩耗条件、寸法精度に応じて、調質や高周波焼入れなどを検討します。

炭素量が増えると、一般に溶接部が硬化しやすくなり、割れのリスクも高まります。ただし、溶接性には炭素だけでなく、マンガン、クロム、モリブデンなどの合金元素も影響します。S45Cなどを溶接する場合は、材料の成分、板厚、継手形状を確認し、必要に応じて予熱や後熱を含む施工条件を検討します。

合金鋼(SCM材など)

合金鋼は、炭素鋼にクロム、モリブデン、ニッケルなどの合金元素を加え、焼入れ性、強度、靭性、耐熱性などを調整した鋼です。

代表的なSCM材はクロムモリブデン鋼で、高強度ボルト、軸、歯車などに使われます。SCM435やSCM440などは、熱処理によって必要な機械的性質を得ることが多いため、材料記号だけでなく、熱処理条件や硬さの範囲を図面で明確にすることが重要です。

※加工時の注意:熱処理では歪みや寸法変化が生じます。粗加工、熱処理、仕上げ加工の順序と仕上げ代をあらかじめ検討します。

鋳鉄(FC・FCDなど)

鋳鉄は、溶融した材料を型へ流し込む鋳造に適し、複雑な形状を一体で作りやすい材料です。ただし、「鋳鉄は鋳造だけ、鋼は切削や溶接だけ」と分けられるものではありません。鋳鉄製品にも仕上げ切削は行われ、鋼にも鋳鋼があります。

FC|ねずみ鋳鉄

FCは、片状黒鉛を含むねずみ鋳鉄です。振動を減衰しやすく、切削性にも優れることから、工作機械のベッド、定盤、ポンプ部品などに使用されます。一方、片状黒鉛の先端に応力が集中しやすいため、延性や衝撃への強さを求める用途では注意が必要です。

FCD|球状黒鉛鋳鉄

FCDは、黒鉛を球状化した鋳鉄です。FCと比べて強度や延性を高めやすく、自動車部品、配管部材、高い荷重がかかる蓋類などに使用されます。

鋳鉄の材料記号では、FC250の数字は引張強さの下限値を表します。FCDはFCD450-10のように、引張強さに加えて伸びを示す数字まで含めて表すため、図面や発注書では末尾まで確認しましょう。

※用途例の注意:マンホール蓋などの蓋類は、要求荷重や規格に応じてFCDが使われることがあります。「マンホール蓋はFC」と一律に扱わず、製品規格を確認してください。

ステンレス鋼(SUS304・SUS316など)

ステンレス鋼は、JISの用語では、クロムを10.5%以上、炭素を1.2%以下含み、耐食性を高めた合金鋼です。表面に形成されるクロムを含む薄い不動態皮膜によって、一般の鋼より腐食しにくい性質を示します。この皮膜は酸素があると再び形成されますが、すき間や汚れの下など、酸素が届きにくい場所では腐食に注意が必要です。

SUS304は、耐食性、冷間成形性、溶接性のバランスから幅広く使われるオーステナイト系ステンレス鋼です。SUS316はモリブデンを含み、SUS304と比べて塩化物環境での孔食やすき間腐食に対する抵抗を高めた鋼種です。

ただし、SUS316を含め、ステンレス鋼はすべての環境で腐食しない材料ではありません。塩化物濃度、温度、薬品、すき間、表面仕上げ、洗浄条件などを確認し、必要に応じてより適した鋼種や表面処理を検討します。また、塩化物、温度、引張応力が重なると、SUS304やSUS316などで応力腐食割れが起こることがあります。溶接や曲げで残る応力も含めて確認が必要です。

また、SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼は加工硬化しやすいため、切削では工具、切削速度、送り、冷却条件の管理が重要です。

ステンレス鋼について詳しくは、「ステンレス鋼とは?特徴や種類、用途、選定方法を解説」もご覧ください。

非鉄金属の種類と特徴

アルミニウム・アルミニウム合金

アルミニウムの密度は約2.7g/cm³で、鉄鋼のおよそ3分の1です。軽量化しやすく、熱や電気を通しやすいことから、輸送機器、筐体、放熱部品、電気部品などに使われます。

アルミニウムの表面には自然に酸化皮膜が形成され、一般的な環境では耐食性を示します。ただし、塩化物環境、強い酸やアルカリ、異種金属との接触などでは腐食することがあります。アルカリ性の強い洗浄剤や、湿ったコンクリート・モルタルとの接触にも注意が必要です。

実務で使用されるアルミニウム材料の多くは合金です。合金系と質別によって、強度、加工性、耐食性、溶接性が変わります。例えばA5052とA6061では成分や用途が異なり、同じ「アルミ」として一括りにはできません。

アルミニウムは強度だけでなく剛性も確認する

アルミニウムは、鉄鋼よりヤング率が低いため、同じ支持条件・荷重・板厚・断面形状で比較すると、たわみが大きくなる傾向があります。これは材料の破壊に関わる「強度」とは別に、変形しにくさを示す「剛性」の問題です。

アルミニウムを採用するときは、必要に応じて板厚を増やす、リブを設ける、押出形状を活用するなど、断面形状で剛性を確保します。

※異種金属接触腐食への注意:アルミニウムとステンレス鋼などを接触させ、水分や電解質が存在すると、アルミニウム側の腐食が進む場合があります。絶縁材、シール、表面処理、排水性などを検討してください。

アルミニウム合金について詳しくは、「アルミニウム合金とは?特徴と種類、性質について解説」をご覧ください。ステンレス鋼との比較は「アルミとステンレスの違いとは?強度・重さ・耐食性を比較し、見分け方も解説」で紹介しています。

銅・銅合金(黄銅・青銅など)

銅は電気伝導性と熱伝導性に優れ、電線、端子、バスバー、熱交換器などに使われます。純銅だけでなく、強度、ばね性、耐摩耗性、切削性などを調整した銅合金も幅広く利用されています。

  • 黄銅:銅と亜鉛を主成分とする合金で、継手、バルブ、ねじ、装飾部品などに使われます。
  • 青銅:銅とすずを主成分とする合金が代表的です。りん青銅やアルミニウム青銅など複数の種類があり、軸受、歯車、摺動部品などに使われます。

銅合金は種類が多く、同じ黄銅や青銅でも成分と性質が異なります。導電性を重視するのか、切削性、ばね性、耐摩耗性を重視するのかを明確にして材料を選びます。

※外観と調達の注意:銅系材料は表面が酸化して変色することがあります。外観が重要な場合は、仕上げや表面処理を検討します。また、材料価格は市況によって変動するため、調達時点で見積もりと納期を確認してください。

チタン・チタン合金

チタンとチタン合金は密度が約4.5g/cm³で、鉄鋼より軽い材料です。材料の種類によっては高い比強度を得られ、海水などに対する耐食性にも優れることから、航空機、化学設備、熱交換器、医療分野などに使用されます。

ただし、「チタンはどの薬品にも腐食しない」というわけではありません。フッ酸やフッ化物を含む薬品、条件によっては塩酸や硫酸などにも注意が必要です。耐食性は薬品の濃度や温度によって変わるため、実際の使用条件に合う耐食データを確認します。医療用途でも、材質規格や製品用途に応じた評価が求められます。

チタンは切削熱が刃先付近に集中しやすく、工具との焼付きや工具摩耗にも注意が必要なため、一般に難削材として扱われます。十分な冷却、適切な切削速度、送り、工具選定が加工品質を左右します。

溶接については、適切な条件では良好な継手を得られますが、高温時に酸素や窒素などと反応しやすいため、溶接部とその周辺を確実にシールドすることが重要です。

マグネシウム・マグネシウム合金

マグネシウムは、実用金属の中でも軽い材料です。実際の部品には、展伸材やダイカスト材などのマグネシウム合金が使われます。軽量で、質量あたりの強度や振動吸収性に優れることから、輸送機器や電子機器の筐体などで利用されています。

AZ31BやAZ91Dは現場でよく使われる呼称ですが、海外の合金呼称体系に基づく名称です。図面や発注書へ指定するときは、適用する規格、製品形状、製造方法を確認してください。

一方、合金や表面状態、使用環境によって耐食性が変わり、異種金属との接触にも注意が必要です。切削そのものは行いやすい材料ですが、細かな切りくずや研磨粉は着火するおそれがあります。加工、集じん、保管は事業所の安全手順に従い、マグネシウム火災に水をかけないでください。消火方法は、事前に安全管理担当者や消防関係者へ確認しておきます。

亜鉛・亜鉛合金

亜鉛の主な用途は、鉄鋼を腐食から守る亜鉛メッキです。このほか、黄銅の原料、亜鉛ダイカスト、電池材料などの化学製品にも使われます。亜鉛メッキでは、鉄より先に亜鉛が腐食する性質を利用し、メッキに小さな傷が生じた場合にも鉄鋼を保護します。

亜鉛合金は融点が比較的低く、複雑形状や薄肉部品を量産するダイカストにも利用されます。材料を選ぶ際は、必要な強度、使用温度、腐食環境、表面処理の要否を確認します。

金属材料を選ぶ5つのポイント

材料選定では、単純に「強い材料」「錆びにくい材料」を選ぶのではなく、部品がどのように使われ、どのような原因で不具合に至る可能性があるかを整理します。

材料を絞り込む基本の流れ

  1. 使用条件を整理する:荷重、温度、薬品、水分、摩耗、必要寿命などを書き出します。
  2. 避けたい不具合を明確にする:破断、たわみ、腐食、摩耗、焼付きなど、起こり得る問題を確認します。
  3. 材料群を絞る:鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などから、必要な機能に合う候補を選びます。
  4. 加工と表面処理を確認する:切削、曲げ、溶接、熱処理、コーティングまで含めて実現性を確認します。
  5. 規格と調達条件を確定する:JIS材料記号、製品形状、質別や熱処理条件、寸法、検査、納期、総コストを図面や仕様書へ反映します。

この流れで候補を絞ったうえで、次の5項目を比較すると、過去図面の踏襲だけに頼らず選定理由を整理しやすくなります。

選定項目 確認する内容 見落としやすい点
1.機械的性質 引張強さ、降伏強さ、硬さ、剛性、靭性、疲労、摩耗、衝撃 強度、硬さ、剛性を同じ意味で扱わない
2.使用環境 温度、湿度、塩分、薬品、屋内外、すき間、異種金属との接触 「ステンレスだから錆びない」など、材料名だけで判断しない
3.物理的性質 密度、熱伝導率、電気伝導率、熱膨張率、磁性 軽量化では、質量だけでなく剛性や断面形状も確認する
4.加工・接合 切削、曲げ、プレス、鋳造、溶接、ろう付け、熱処理、表面処理 加工後の歪み、加工硬化、溶接割れ、表面処理との相性を確認する
5.コスト・調達 材料費、加工費、歩留まり、検査、在庫、納期、保全、寿命 材料単価だけでなく、製造から保全までの総コストで比較する

1.必要な強度・硬さ・剛性・靭性を分けて考える

強度は荷重に耐える能力、硬さは押し込みや摩耗への抵抗、剛性は変形しにくさ、靭性は破壊までにエネルギーを吸収する能力に関係します。これらは別の性質であり、一つの数値だけでは材料の適否を判断できません。

静的な荷重だけでなく、繰り返し荷重、衝撃、摩耗がある場合は、疲労強度、破壊靭性、表面硬さなども確認します。摩耗の要因と改善方法は、「耐摩耗性とは何を指す?向上させる方法も紹介」で解説しています。

2.腐食・温度・薬品などの使用環境を整理する

腐食は、材料と環境の組み合わせで起こります。水分、塩化物、酸・アルカリ、異種金属接触、すき間、汚れの滞留などを具体的に確認します。腐食の仕組みや耐食性の高い材料については、「金属の耐食性とは?耐食性が高い金属も紹介」も参考になります。

高温用途では、融点だけでなく、高温強度、酸化、クリープ、熱疲労、熱膨張差を確認します。温度が上がると材料の強度が低下したり、熱処理で得た性質が変化したりする場合があります。

3.重さ・熱・電気・磁性の条件を確認する

軽量化を目的にアルミニウムやチタンを選ぶ場合は、密度だけでなく必要な板厚や断面も含めて比較します。放熱部品では熱伝導率、電気部品では導電率、センサーや磁気機器の周辺では磁性の確認が必要です。

フェライト系のSUS430やマルテンサイト系ステンレス鋼は、通常、磁石に付きます。一方、オーステナイト系のSUS304は一般に磁石に付きにくいものの、曲げやプレスなどの冷間加工を受けた部分が磁性を示すことがあります。磁石だけで材質を特定することはできず、磁性があること自体が不良というわけでもありません。

4.加工方法と工程順序を決める

材料が加工できるかだけでなく、必要な精度と数量で安定して加工できるかを確認します。切削、曲げ、溶接、熱処理、表面処理の順序によって、寸法、硬さ、表面状態が変わるためです。

量産品では、材料単価の差よりも加工時間、工具寿命、歩留まりが総コストに大きく影響することがあります。設計段階から加工会社や表面処理会社とすり合わせることで、手戻りを減らしやすくなります。

5.材料費だけでなく総コストと入手性で比較する

金属材料の価格は、鋼種、合金元素、製品形状、質別や熱処理条件、寸法、購入量、市況によって変わります。「鉄鋼は安い」「非鉄金属は高い」と固定的に判断することはできません。

材料費に加え、加工、熱処理、表面処理、検査、輸送、交換、メンテナンスまで含めて比較します。特殊材を選ぶ場合は、最小ロット、納期、代替材の有無も確認しておくと調達リスクを抑えられます。

金属材料の主な加工方法

加工方法は、材料との相性だけでなく、形状、精度、数量、設備、コストによって選びます。工程を整理するときは、形を作る加工、不要部分を除く加工、接合、積層造形、表面処理を分けて考えると理解しやすくなります。

素材から形を作る加工|圧延・鍛造・押出・プレス・鋳造

圧延、鍛造、押出、プレス、曲げなどは、材料を塑性変形させて形を作る加工です。鋳造は、溶融した金属を型に流し込んで形を作ります。

量産では金型によって生産性を高められますが、初期費用、抜き勾配、肉厚、成形限界などの制約があります。鍛造品では材料の流れを活かした強度設計、鋳物では収縮や内部欠陥を考慮した形状設計が必要です。

不要部分を除く加工|切削・研削・放電加工(EDM)

切削、研削、穴あけなどは、不要な部分を取り除いて寸法や表面を仕上げる加工です。多品種少量品や高精度部品に向きます。

放電加工(EDM)は、工具電極と工作物の間に放電を発生させ、その熱作用で材料を除去する加工です。導電性のある材料が対象となり、切削では難しい高硬度材や複雑形状にも対応できます。

材料によって、構成刃先、加工硬化、工具摩耗、焼付き、熱変形などの起こり方が異なります。必要以上に厳しい公差や深穴、薄肉形状を設けると加工費が上がりやすいため、機能上必要な箇所に精度を絞ります。

部材をつなぐ加工|溶接・ろう付け

溶接やろう付けは、部材同士をつなぐ接合方法です。溶接では母材を溶かす方法や、加熱・加圧して接合する方法があります。ろう付けでは母材を溶かさず、母材より融点の低いろう材だけを溶かして接合します。

溶接では、熱による歪み、残留応力、溶接部の硬化、割れ、耐食性の変化などが起こる場合があります。材料記号だけで溶接性を判断せず、板厚、継手、施工条件、使用環境を確認します。

材料を積み重ねる加工|積層造形(AM)

積層造形(AM)は、3Dデータを基に材料を層状に付加して形を作る加工です。金属AMは、内部流路、軽量な格子構造、複数部品の一体化など、従来加工では作りにくい形状に対応できます。

一方で、造形方向による性質の違い、残留応力、表面粗さ、内部欠陥、後加工、検査方法などを考慮する必要があります。

※用語の注意:溶接・ろう付けは接合方法、金属AMは積層造形です。いずれも材料を加える場合がありますが、同じ「付加加工」として一括りにせず、工程の原理と品質管理を分けて説明する方が正確です。

表面に機能を与える加工|メッキ・アルマイト・溶射・塗装・コーティング

表面処理は、基材全体を別の材料に置き換えず、表面に耐食性、耐摩耗性、非粘着性、すべり性、電気特性などを与える方法です。個別の処理を検討する場合は、「メッキとは?種類と特徴、他の表面処理との違いやメリット・デメリットまで解説」や「アルマイト処理とは?処理工程やメリット・デメリットを解説」もご覧ください。

ただし、表面処理だけで基材の強度不足や剛性不足を補えるとは限りません。基材に求める機械的性質と、表面に求める機能を分けて設計することが重要です。

金属の種類に関するよくある質問

ステンレス鋼は非鉄金属ですか?

いいえ。ステンレス鋼は鉄を主成分とする鋼であり、鉄鋼材料に分類されます。クロム、ニッケル、モリブデンなどを含む鋼種がありますが、合金元素を含むことを理由に非鉄金属へ分類するわけではありません。

非鉄金属はすべて磁石に付きませんか?

いいえ。非鉄金属は「鉄を主成分としない」という分類であり、磁性の有無を示す名称ではありません。ニッケルやコバルトのように磁性を持つ非鉄金属があります。

最も強い金属はどれですか?

「強い」の意味によって答えが変わります。引張強さ、降伏強さ、硬さ、靭性、疲労強度、耐摩耗性などは別の指標です。また、鋼種、合金、熱処理、温度、形状によって数値は変わります。使用時の壊れ方を想定し、必要な指標で比較します。

アルミニウムは軽いので、鉄鋼の代わりにできますか?

用途によっては可能ですが、単純な置き換えはできません。アルミニウムは軽量である一方、鉄鋼よりヤング率が低く、同じ形状ではたわみが大きくなりやすいためです。合金と質別を選び、板厚、リブ、断面形状、接合方法まで含めて再設計します。

材料費が最も安い金属を選べばコストを抑えられますか?

材料費だけでは総コストを判断できません。加工時間、工具寿命、歩留まり、熱処理、表面処理、検査、交換頻度、メンテナンスも含めて比較する必要があります。価格は市況や購入条件でも変わるため、選定時点の見積もりで確認します。

まとめ

金属は、鉄を主成分とする鉄鋼と、鉄を主成分としない非鉄金属に大きく分けられます。鉄鋼にはSS材、S○○C材、SCM材、鋳鉄、ステンレス鋼などがあり、非鉄金属にはアルミニウム、銅、チタン、マグネシウム、亜鉛などがあります。

材料選定では、金属名だけで判断せず、強度、硬さ、剛性、靭性、腐食環境、温度、加工方法、調達性、総コストを確認することが重要です。また、同じ材料群でも、鋼種、合金番号、質別、熱処理、加工状態によって性質が変わります。

基材に必要な強度や形状を確保したうえで、耐食性、耐摩耗性、非粘着性、すべり性などの表面機能が不足する場合は、表面処理やコーティングを組み合わせる方法があります。

金属部品への表面処理・コーティングをご検討の方へ

吉田SKTでは、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属部品に対し、フッ素樹脂コーティング、シリコーンコーティング、セラミック系処理などの機能性表面処理をご提案しています。

材質だけでなく、部品の形状・サイズ、使用温度、接触する薬品、摺動条件、清掃方法、必要な機能などを確認し、用途に合った処理を検討します。付着、摩擦、摩耗、腐食、帯電など、金属表面に関する課題がございましたら、吉田SKTへご相談ください。