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テフロンとは?特徴や性質、フッ素樹脂との違い、PTFEの発見まで解説

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テフロン™とは、ケマーズ社が商標を持つフッ素樹脂製品の名称で、代表的な素材にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)があります。耐熱性や非粘着性、耐薬品性などに優れ、調理器具や産業用途をはじめ、さまざまな分野で使用されています。

本記事ではまず、テフロン™の定義と成り立ちを解説し、その特徴や性質について詳しく見ていきます。続いて、PTFE・FEP・PFA・AFといった代表的な製品の構造と特性を紹介し、テフロン™とフッ素樹脂の違いについてもわかりやすく整理します。

さらに、テフロン™樹脂の具体的な用途や安全性、1938年にPTFEが発見された歴史的背景、そして国内外の代表的なフッ素樹脂メーカーと製品名についても取り上げます。

テフロン™やフッ素樹脂に関する基礎知識から応用までを丁寧に解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

テフロンとは

テフロン®」とは、デュポン社のフッ素樹脂の登録商標です。フッ素樹脂は、分子構造にフッ素原子を含むプラスチックでPTFEを始め9種類あります。現在、「テフロン™」はケマーズ社の商標になります。テフロンには、テフロン™PTFE、テフロン™FEP、テフロン™PFA、テフロン™AFなどの製品があります。

※以下、デュポン社の登録商標時の「テフロン」を指す表記についてはレジスターマーク(Ⓡ)を付記しています。

参考記事:【完全ガイド】フッ素樹脂とは~PTFE・FEP・PFAなどの種類・特性、加工、コーティング、FAQを解説

テフロン™の特徴と性質

テフロン™の特徴

テフロン™PTFEの特徴一覧

PTFE以外のテフロン™は分子構造の違いにより性質が異なります。以下では分子構造の違いと性質について解説します。

テフロン™PTFEの分子構造と性質

PTFEは炭素(C)とフッ素(F)からなる直鎖状の高分子です。C-Cの結合部をフッ素原子が保護するような構造をしています。分子量が高く分子鎖が非常に長いことやC-F結合が非常に強い結合エネルギーを持っていること、表面エネルギーが極めて低いことによって非粘着性、低摩擦性、耐薬品性、耐熱性(連続使用温度が260℃)などの特徴を発揮します。

>PTFEの詳しい解説はこちらもご確認ください。

PTFEの分子構造

テフロン™FEPの分子構造と性質

FEPはPTFEの主鎖に部分的に-CF₃の側鎖を持つことで融点が260-270℃になり、溶融樹脂の成形方法を用いることができるようになりました。成形しやすくなった一方で連続使用温度は200℃とPTFEに比べると若干低くなります。

>FEPの詳しい解説はこちらもご確認ください。

テフロン™PFAの分子構造と性質

PFAはPTFEの主鎖に部分的にパーフルオロアルキル基の側鎖を持ち融点は290-310℃でFEPのように溶融樹脂の成形が可能です。連続使用温度はPTFEと同様に260℃です。

>PFAの詳しい解説はこちらもご確認ください。

テフロン™AFの分子構造と性質

PTFE、FEP、PFAは結晶をもつ樹脂ですがテフロン™AFは非晶質な樹脂です。光の透過性に優れ、低反射や低屈折率などの光学特性をもちます。

テフロン™とフッ素樹脂の違い

「テフロン™」と「フッ素樹脂」

「テフロン™」は製品ブランド名であり、フッ素樹脂そのものを指す言葉ではありません。フッ素樹脂とは、分子構造にフッ素原子を含むプラスチックの総称で、PTFEを含めて9種類のタイプがあります。

下記に一覧でご紹介します。

フッ素樹脂一覧

PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)

世界で生産量・使用量ともに最も多いフッ素樹脂です。白色で結晶性が高く、フッ素樹脂の特徴(耐熱性、耐薬品性、非粘着性、潤滑性)を最もよく反映しています。押し出し成形が困難で、圧縮による成形・切削加工が必要となります。

参考記事:PTFEとは?~テフロン™樹脂との違いも解説~

FEP(Fluorinated Ethylene Propylene

PTFEに次いで開発され、溶融性を改良したパーフルオロポリマーです。様々な成形方法が可能になり、これによりチューブやフィルムといった成形品が登場しました。耐熱性はPTFEより低いですが、耐薬品性・非粘着性に優れています。

参考記事:フッ素樹脂FEPとは?特徴やPTFEとの違い、PFAとの違いも解説

PFA(Per Fluoro Alkoxy polymer

FEPに次いで開発された樹脂です。FEPと同様に溶融成形が可能でありながら耐熱性にも優れています。

参考記事:PFAの特性やPTFEとの違い・成形方法や製品例まで詳しく解説

ETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylen copolymer

上記の3種とは異なり、パーフルオロポリマーではないため耐熱性・非粘着性・離形性は劣るものの、低温での加工が可能で、比較的安価な樹脂です。

参考記事:ETFEとは?特長や分子構造、加工方法、用途まで解説

ECTFE(Ethylene Chloro Tri Fluoro Ethylene copolymer

ETFEに比べて難燃性と硬さに優れます。また機械的強度や加工性においても優れた樹脂です。

PCTFE(Poly Chloro Tri Fluoro Ethylene

樹脂としては透明で硬く、ガス透過性がフッ素樹脂の中でトップクラスに低い事が特徴です。成形には向かず、放射線で脆化を起こします。

PVdF(Poly Vinyli dene Fluoride

フッ素樹脂の中でも特に機械的強度に優れ、加工性も良く、耐候性・放射線にも強い樹脂です。その特徴から、身近な製品では釣り糸などに使用されています。

参考記事:PVDFとは?分子構造と物性の特長や用途を解説

PVF(Poly Vinyl Fluoride

非常に成形が難しい樹脂のため、太陽電池用途などの高機能フィルムがメインとなっています。

TFE/PDD(Tetra Fluoro Ethylene/2,2-bistrifluoro-methyl-4,5-difluoro-1,3-dioxole

透明で、吸湿性や屈折率が低いことが特徴の非晶性フッ素樹脂です。光学機器などに利用されています。

テフロン™樹脂の用途

テフロン™コーティング

テフロン™樹脂の用途で最も知られているものとして、テフロン™コーティングやテフロン™加工があります。テフロン™コーティングは、テフロン™樹脂が持つさまざまな特性(非粘着性や撥水性、すべり性に優れ、薬品に強く、高い純粋性を持つなど)を部材の表面に、特殊な工程を経て塗装することで、付着防止、摩擦低減、薬品からの保護、純粋性の向上などの機能を付与する表面処理です。

>テフロン™コーティングの詳細はこちらもご確認ください。

工業用テフロン™コーティングの加工は、ケマーズ社のLicensed Industrial Applicator(工業用品塗装指定工場)に限られます。吉田SKTは、ケマーズ社と工業用テフロン™コーティングのライセンス契約を結んでおります。テフロン™コーティングについてはお気軽にお問い合わせください。

テフロン™樹脂の成形品

テフロン™樹脂は、シート材、パイプやチューブ、継手、ホース、容器などさまざまな形で利用されています。化学プラントはもちろんのこと、食品、医薬品の製造現場、半導体製造の設備や装置、自動車部品や通信機器、OA機器、免振装置や建築資材、次世代電池分野など用途の幅は多岐にわたります。

関連記事:フッ素樹脂シート(TEFPASS® SHEET)
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テフロン™の安全性

テフロン™樹脂は自身のもつ分子構造により、耐熱性が高く、ほとんどの薬品に侵されることのない特徴があります。一方で、フライパンを空焚きするなど、融点を超えた高温環境では有害な分解ガスの発生も確認されています。テフロン™をはじめとしたフッ素樹脂製品の安全性についてはこちらもご確認ください。
参考記事:PFAS、PFOS、PFOA、PTFEは何が違うの?フッ素樹脂との違いまで解説

テフロン®PTFEの発見

テフロン®の中で一番最初に開発されたPTFEは、1930年代に米国デュポン社で行われていたフロンガスの研究実験中に偶然発見されました。

PTFEの発見
写真提供:ケマーズ社
写真提供:ケマーズ社

1938年4月6日の出来事

デュポン社の研究所、ジャクソン・ラボラトリーでは、若き日のロイ・プランケット博士が、新たな冷媒をつくる中間体としてTFE※に注目しており、TFEを充填した耐圧ボンベをドライアイスで冷凍保存していました。

※TFE・・・テトラフルオロエチレンと呼ばれる気体状の単量体(モノマー)

1938年4月6日の朝、プランケット博士と実験助手はTFEの入ったボンベのバルブを開き反応器に送ろうとしました。ところが中からTFEは送られず、重さを確認すると、詰めた時と同じでした。そこでボンベを逆さにして振ってみると白い粉が出てきたことに興味を持ったプランケット博士は、ボンベを切り開いて中を確認したところ、白いワックス状の物質で覆われていました。

PTFEの発見
写真提供:ケマーズ社
写真提供:ケマーズ社

プランケット博士の研究ノートによると、博士はこの白い固体の物質をC₂F₄の重合体(ポリマー)と推測しています。

プランケット博士の研究ノート
写真提供:ケマーズ社
写真提供:ケマーズ社

博士はこの白い固体をさらに2日間にわたって調査したところ、この物質が非常にユニークな特徴をもっていることを発見しました。

この白い固体がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)です。

この日のプランケット博士の実験は失敗でしたが、TFEが重合してポリマーになったと確信した博士は、その後の2日間で現在知られているPTFEの特性の多くを把握しました。

【博士が把握した特性】

・非常に優れた耐熱性がある

・熱可塑性で燃えにくい 性質がある

・耐化学薬品性を有する  

※研究ノート和訳等参考

その後、PTFEは研究開発が進められ、デュポン社は1941年にPTFEを特許登録しています。

テフロン®の開発と販売

デュポン社はPTFEの発見後、さまざまなテフロン®の開発を行いテフロン®製品を販売します。テフロン®PTFEは1946年、量産が開始されます。1960年にはテフロン®FEPの販売を開始し、1972年にテフロン®PFAの販売が始まり1989年にテフロン®AFが発売されました。現在、テフロン™ブランドはテフロン™PTFE、テフロン™FEP、テフロン™PFA、テフロン™ETFEがケマーズ社より販売されています。

フッ素樹脂の商品名とメーカー

テフロン™樹脂はケマーズ株式会社のフッ素樹脂の商標ですが、フッ素樹脂は多くのメーカーで独自に開発製造されています。国内の代表的な企業としては、ダイキン工業株式会社やAGC株式会社などがあり、ポリフロン™やフルオン®などの商品名で販売されています。

以下は代表的な商品名と販売メーカーです。

ケマーズ株式会社 テフロン™
AGC株式会社 Fluon®
Solvay Solexis Halar®
Solvay Solexis Algoflon® 
Solvay Solexis Hylar®
ダイキン工業株式会社 ネオフロン™
ダイキン工業株式会社 ポリフロン®

まとめ

テフロン®PTFEの開発から半世紀以上経ちますが、現在の先端産業においてフッ素樹脂は無くてはならないプラスチック素材です。

当社株式会社吉田SKTは、1963年に名古屋でフッ素樹脂加工を開始。1968年にはフッ素樹脂を発明した米国デュポン社(現ケマーズ社)とのライセンス契約を結び、長年にわたり様々なコーティング技術を蓄積してきました。

テフロン™コーティング、フッ素樹脂コーティングの加工はもちろん、PTFEシート、PFAシートを始め、PFAチューブ、PFAパイプ、PTFE含侵シート(ベルト)、PTFE粘着テープ、PFA熱収縮チューブなどの取り扱いもございます。フッ素樹脂コーティングやフッ素樹脂製品についてお探しの場合や情報については、お気軽にお問い合わせください。