精密部品の搬送に使われるキャリアテープは、粘着性のカバーテープでふたをしてから、リールに巻き取られますが、カバーテープからはみ出た粘着剤がリールに付着する現象が起きることがあります。
あるお客様では、リチウムイオン電池の部品をキャリアテープと呼ばれるエンボステープに包装し、各工程へ運んでいました。具体的には、製品がキャリアテープのポケットに入れられたあとカバーテープと呼ばれる粘着シート材でシールされ、テープ状のまま塩ビ製のリールに巻き取られ、1巻ずつ梱包されます。その後、搬送されるなかで粘着剤(ホットメルト剤)がはみ出てリールの板に付着。リールがひどく汚れる原因となっていました。
リールはくり返し使用するため、その都度キシレンで洗浄しており、作業者の負担となり生産効率を下げていました。
リールに付着する粘着剤をより軽くふき取れるようにし、洗浄回数を減らす方法がないかとご相談いただきました。まずリール板は塩ビ製のため、200℃以上での焼付工程のあるフッ素樹脂コーティングを処理することは難しいとされました。この課題を解決できるコーティングとして、非粘着性に優れることはもちろん、プラスチックへの加工が可能で、溶剤で洗浄しても溶けたり剥離したりしないことが条件でした。
ご相談いただいた当初は、常温加工できる特殊なフッ素コーティング「セラシールドF」と、「シリコーンコーティング」をご提案しました。しかし通常のシリコーンコーティングは溶剤に弱く、洗浄によって効果がなくなってしまい、一方の「セラシールドF」では非粘着性が足らず、洗浄回数を減らすことができませんでした。
その後、吉田SKTはプラスチックへの加工と溶剤洗浄が可能で、粘着剤の付着に対応したコーティングを開発。数ヶ月ののちMRS-200をご提案し、試作品を納入しました。お客様のご要望にかなうコーティングの開発で数年来ご使用いただいております。