フィルム材の真空成形で、成形したフィルムを金型から外す(離型する)際に、フィルムが張り付いて離型不良が起きていました。
真空成形とは、材料となるフィルムなどの樹脂シートを、加熱して軟らかくしたうえで金型を押し付けることで形づくる成形方法で、金型に空いた小さな穴からエアーを抜いてフィルムとの間を真空状態にし、しっかりと密着させます。
離型時の張り付きを防ぐには金型温度を調整する方法もありますが、成形のために適している温度は限られているため、温度を変更する対策を採るのは難しい状況でした。
お客さまではもともと、離型性に優れるフッ素樹脂コーティング加工の金型を使用されていましたが、成形温度でのフィルムの張り付きが発生していました。
またフッ素樹脂コーティングの表面は普通、平滑ですが、今回は平滑な金型面とフィルムとの間のエアーがうまく抜けないためにしっかり密着せず、均一に熱が伝わらないことが、成形不良にもつながっていました。
フッ素樹脂コーティングよりも離型性に優れた「MRSコーティング」もご提案しましたが、テストピースでの離型性は良好な反面、フッ素樹脂コーティングと同様に平滑な表面であったため、実際の金型で試してみるとエアーがうまく抜けずに加熱ムラが生じました。
スーパーTPコーティングは、フッ素樹脂コーティングでありながらその表面に滑らかな凸面を形成します。この凸面が金型とフィルムの間に適度な隙間を作ったことで、エアーの抜けが改善。加熱ムラの問題が解消できました。またフィルムの張り付きに対する離型性も良好でした。
なおコーティング面にできた凸面は成形品に転写する懸念がありますが、今回のケースでは製品品質への影響はない程度であり、問題なくお使いいただくことができました。
フィルムの離型やスーパーTPコーティング
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